作業環境測定の暑熱基準|測定義務・WBGT・測定方法と工場の改善策
最終更新:2026年7月16日/本記事は一般的な情報であり法的・医学的助言ではありません

暑熱作業に共通する「室温○℃以下なら適法」という単一の上限はありません。暑熱の測定は、目的の異なる複数の制度に分かれています。
溶鉱炉・加熱炉・熱源乾燥室・冷蔵庫内など労働安全衛生規則第587条に定める暑熱・寒冷・多湿の屋内作業場では、第607条により半月以内ごとに1回、気温・湿度・ふく射熱を定期測定し、記録を3年間保存します。一方、熱中症リスクの評価では、WBGTを作業位置で随時把握し、着衣補正を加えて作業強度・暑熱順化別の基準値と比較します。
WBGT28・気温31と時間条件は、第612条の2の報告体制・手順・周知の対象を判定する数値であり、一律の作業中止・環境合否基準ではありません。WBGT計を購入しただけでは法令対応は完了しません。測る・評価する・改善する・再測定する・記録するまでを一つの運用にします。
まず「測る」:現場・工場用の黒球式WBGT計
作業環境の評価では、日射・ふく射熱を反映する黒球付きが基本です。JIS適合・記録機能・防水防塵はリンク先でご確認ください。

みはりん坊プロ AD-5698B
携帯型(黒球の有無・JIS適合はメーカー情報で確認)
対応する測定上の課題:作業位置での随時把握
向く現場:屋内外・携帯
購入前の確認:黒球の有無・JIS適合・在庫
価格・在庫は商品ページでご確認ください。

KO392 黒球式熱中症指数計
黒球式(据置/携帯・JIS適合は要確認)
対応する測定上の課題:熱源付近の実測
向く現場:工場・建設
購入前の確認:据置/携帯・JIS適合・在庫
価格・在庫は商品ページでご確認ください。

携帯型黒球付熱中症計 6913
携帯型・黒球付(仕様は要確認)
対応する測定上の課題:測定点マップの巡回測定
向く現場:巡回・複数点
購入前の確認:記録機能・電池・在庫
価格・在庫は商品ページでご確認ください。
| 商品カテゴリ | 環境を測る | 環境を改善 | 身体を冷却 | 休憩を補助 | 異常時対応 |
|---|---|---|---|---|---|
| WBGT計・標識 | ○ | — | — | — | — |
| 遮光ネット | — | ○(ふく射熱・日射) | — | — | — |
| 工場扇・冷風機 | — | ○(要・前後測定) | — | — | — |
| インナー・冷却ベスト | — | — | ○(環境改善の代替でない) | — | — |
| 冷却飲料設備 | — | — | △ | ○ | — |
| 応急セット | — | — | △ | — | ○(救急の代替でない) |
暑熱の作業環境測定に関する結論
一律の室温上限はない
暑熱作業に共通する単一の室温上限は法令で定められていません。「工場は○℃以下なら必ず適法」という基準はなく、対象の屋内作業場での定期測定と、熱中症リスク評価のためのWBGT把握を、目的に応じて分けて行います。
屋内暑熱作業場の定期測定
労働安全衛生規則第587条に列挙された暑熱・寒冷・多湿の屋内作業場(溶鉱炉・加熱炉・鋳込み・熱源乾燥室・冷蔵庫内など)では、第607条により半月以内ごとに1回、気温・湿度・ふく射熱を定期測定し、記録を3年間保存します。
WBGTリスク評価
熱中症リスクの評価では、WBGTを作業位置で随時把握し、着衣補正を加えたうえで作業強度・暑熱順化別の基準値と比較します。屋内定期測定とWBGTリスク評価は、目的も方法も異なります。数値の読み方はWBGT基準値と労働安全衛生法もご参照ください。
WBGT28・気温31の意味
WBGT28以上または気温31度以上、かつ継続1時間以上または1日4時間超という条件は、第612条の2の報告体制・対応手順・周知の対象を判定するものです。WBGT28は一律の作業中止基準でも、作業環境の合否基準でもありません。作業中止の考え方は熱中症の作業中止基準もあわせてご確認ください。
WBGT28は一律の作業中止・環境合否基準ではありません。測定値や作業時間の条件を、対応を遅らせる理由にしないでください。
数値は事前の備えやリスク評価の目安であり、安全のしきい値ではありません。作業強度・着衣・暑熱順化・体調でリスクは変わります。ふらつき・頭痛・大量発汗やその後の発汗の減少などの異変があれば、測定値や時間の条件にかかわらず、作業離脱・身体冷却・状態確認・必要に応じた救急要請につなげてください。本記事は一般的な情報であり、法的・医学的助言ではありません。
作業環境測定とWBGT測定は何が違う?
暑熱の測定は、性質の異なる制度が重なっています。本記事ではこれを「暑熱測定の4層構造」として整理します。混同されやすい条番号を正しく押さえることが第一歩です。法体系全体は労働安全衛生法における暑熱環境、リスク評価の進め方は熱中症リスクアセスメントもご参照ください。
安衛法第65条
労働安全衛生法第65条は、政令で定める作業場について作業環境測定を行い、記録することを事業者に義務づける根拠規定です。暑熱の屋内作業場もこの枠組みに位置づけられます。
安衛則587条
労働安全衛生規則第587条は、測定の対象となる暑熱・寒冷・多湿の屋内作業場を16号にわたって列挙します。溶鉱炉や加熱炉、溶融金属の鋳込み、熱源を用いる乾燥室、冷蔵庫・冷凍庫の内部などが該当し、第1号から第8号までの熱源のある作業場はふく射熱の測定対象になります。
安衛則607条(測定義務)と588条の混同に注意
暑熱屋内作業場の測定義務を定めるのは第607条で、第587条の作業場について半月以内ごとに1回、定期に気温・湿度・ふく射熱を測定します。第588条は「著しい騒音を発する屋内作業場」を定める規定で、暑熱の測定とは別物です。「587条・588条で暑熱を測る」という説明は誤りで、正しくは587条(対象)+607条(測定)です。測定方法は作業環境測定基準により、気温・湿度は0.5度目盛りのアスマン通風乾湿計(同等以上)、ふく射熱は黒球温度計を用います。
2026年ガイドライン
2026年の職場における熱中症防止のためのガイドラインでは、作業場所にWBGT指数計を設置するなどしてWBGT値を把握することが望ましいとされ、事前に基準値を超えることが予想される場合は作業中に実測するよう努めます。これは定期測定とは別の、リスク評価のための随時把握です。
安衛則612条の2
2025年6月施行の第612条の2は、WBGT28以上または気温31度以上で継続1時間以上または1日4時間超が見込まれる作業について、報告体制の整備・重篤化防止の手順作成・関係者への周知を義務づけます。測定はこれらの前提になりますが、測定自体がこの条で直接義務づけられているわけではありません。
| 制度 | 対象 | 測定項目 | 頻度 | 担当 | 記録 | 目的 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 安衛法65条 | 政令で定める作業場 | —(根拠規定) | — | 事業者 | 義務 | 作業環境測定の根拠 |
| 安衛則587条+607条 | 暑熱・寒冷・多湿の屋内作業場(16種) | 気温・湿度・ふく射熱 | 半月以内ごとに1回 | 事業者(測定士は必須でない) | 3年間保存 | 屋内暑熱作業場の定期測定 |
| 2026年ガイドライン | 熱中症リスクのある作業 | WBGT(実測) | 随時・予想超過時 | 事業者 | 任意様式で記録推奨 | リスク評価 |
| 安衛則612条の2 | WBGT28以上等かつ時間条件 | —(体制・手順) | 作業前に整備 | 事業者 | 手順を文書化 | 報告体制・手順・周知 |
※第588条は著しい騒音を発する屋内作業場の規定で、暑熱測定とは無関係です。公的情報はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)および厚生労働省「職場における熱中症予防情報」で最新条文をご確認ください。
暑熱作業場で測定する3項目
気温
気温は、0.5度目盛りのアスマン通風乾湿計またはこれと同等以上の性能を持つ機器で測ります。日射や周囲の熱の影響を受けにくい方法で測定することが基本です。
湿度
湿度も同じくアスマン通風乾湿計などで測ります。湿度が高いほど汗が蒸発しにくく、同じ気温でも熱中症リスクが上がるため、気温とセットで把握します。
ふく射熱
ふく射熱は黒球温度計で測ります。第587条第1号から第8号までの熱源のある屋内作業場が対象で、炉などの発熱体ごとに、作業場所で熱源に最も近い位置で測定します。
WBGT
WBGTは、自然湿球温度・黒球温度・気温を組み合わせた暑さ指数で、湿度・日射・ふく射熱・気流を総合的に反映します。定期測定の3項目とは別に、熱中症リスク評価のために黒球付きのWBGT計で把握します。
温湿度計だけでは足りない場所
炉前や直射日光下など、ふく射熱の大きい場所は、温湿度計だけでは暑さを過小評価します。こうした場所は黒球のある機器で測ることが欠かせません。黒球がなくても同じ、という扱いはしません。
測定頻度と記録
屋内の定期測定
第587条の屋内作業場では、第607条により半月以内ごとに1回、定期に気温・湿度・ふく射熱を測定します。この頻度は、熱中症リスク評価のための随時把握とは別のものです。
WBGTの随時把握
WBGTは、作業条件や気象が変わるたびに随時把握します。定期測定の半月ごとの周期とは切り離し、暑い日や高強度作業のときはその都度測る運用にします。
朝一度では足りないケース
朝一度だけの測定では、日中のピークや午後の設備稼働時の上昇を見落とします。最も暑くなる時間帯を含めて、時間帯別に測ります。
条件変化時の再測定
熱源の稼働状況、作業内容、換気・空調の状態が変わったときは、その都度再測定します。設備が停止したときも短時間でWBGTが上昇するため、再測定します。
改善前後の比較
遮へい・送風・冷房などの対策を導入したら、作業位置で対策前後のWBGTを測り、効果を数値で確認します。体感の改善とWBGTの変化は必ずしも一致しません。
記録保存
定期測定では、測定日時・測定条件・測定結果・改善措置を講じたときはその概要等を記録し、3年間保存します。WBGTの随時把握の記録に法定様式はありませんが、作業強度・着衣・順化・対策・再測定値とあわせて残すと、監査や翌年度の計画に役立ちます。以下の記録テンプレート(表6)を活用してください。
| 日付 | 時刻 | 場所 | 機器 | 気温 | 湿度 | WBGT | 作業 | 作業強度 | 着衣 | 順化 | 対策 | 再測定 | 担当者 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 7/○ | 10:00 | 炉前 | 黒球式 | 34.0 | 55% | 29.0 | 炉前作業 | 高代謝率 | 作業服 | 順化 | 遮へい・送風 | 27.5 | ○○ |
| 7/○ | 14:00 | 荷捌き場 | 黒球式 | 33.0 | 60% | 28.5 | 運搬 | 中程度 | 作業服 | 非順化 | 送風・休憩延長 | 27.0 | ○○ |
工場・倉庫の測定場所
どこを測るかで結果は大きく変わります。作業工程と熱源を確認し、測定点マップ(表2)を作って、暑くなりやすい場所を漏れなく押さえます。業種別の対策は工場の熱中症対策や倉庫の熱中症対策もご参照ください。

作業者位置
測定は、作業者が実際に作業する位置で行います。屋内定期測定では、単位作業場所の中央部・床上50〜150cmに測定点を1つ以上設けます。離れた通路や事務所で測った値では実態を反映できません。
熱源
炉や加熱設備などの熱源は、ふく射熱でその周囲のWBGTを局所的に押し上げます。ふく射熱は熱源ごとに、作業場所で熱源に最も近い位置で測ります。
高さ・階層
熱は上部にこもりやすく、2階・中2階・高所作業床は下階より高温になりがちです。作業する高さで測ることが重要です。
荷捌き場・コンテナ
大型シャッター付近や、密閉されたコンテナ・トラック荷台の内部は、短時間でWBGTが急上昇します。入る前と作業中に測ります。

休憩場所
休憩所が暑いままでは身体が回復しません。作業場所だけでなく休憩場所も測り、涼しく保てているかを確認します。
携帯測定
複数の測定点を回るには携帯型が便利です。据置型で常時監視する点と、携帯型で巡回する点を組み合わせ、測定方法を統一します。
| 測定点 | 熱源・特徴 | 測定時間 | 確認理由 | 対策候補 |
|---|---|---|---|---|
| 炉前 | 加熱炉のふく射熱 | 稼働ピーク時 | 局所の高WBGT | 遮へい・スポット送風 |
| 中2階・高所床 | 熱のこもり | 午後 | 上部の高温 | 換気・送風 |
| 荷捌き場 | シャッター・直射 | 日中 | 外気・日射 | 遮光・送風 |
| コンテナ内 | 密閉・高温 | 入前・作業中 | 急上昇 | 入前換気・交代 |
| 休憩所 | 回復の場 | 休憩時間帯 | 回復できるか | 冷房・日陰 |
建設現場・屋外作業の測定

587条との違い
第587条・第607条の定期測定は屋内作業場が対象で、屋外作業にこの半月ごとの定期測定義務が課されるわけではありません。ただし屋外が測定不要という意味ではなく、熱中症リスク評価のためのWBGT把握は屋外でも必要です。建設現場の対策は建設業の暑さ対策もご参照ください。
環境省予測値
環境省の熱中症予防情報サイトの値は、地域を代表する参考値として事前の傾向把握に使えます。ただし、これだけで全現場を判断することはできません。
実測が必要な条件
事前にWBGTが基準値を超えることが予想される場合は、作業位置で実測するよう努めます。日射の強い場所、照り返しの大きい場所、風の通らない場所は特に実測します。
日陰と炎天下
同じ現場でも、日陰と炎天下ではWBGTが大きく異なります。日陰だけで測ると炎天下のリスクを見落とすため、実際に作業する場所で測ります。
照り返し・風
アスファルトやコンクリートの照り返し、風の有無もWBGTに影響します。路面近くの作業や無風の場所は高くなりやすいため、条件を記録とあわせて残します。
測定WBGTをどの基準と比較する?
測ったWBGTは、作業強度・暑熱順化・着衣を踏まえた基準値と比較して初めて意味を持ちます。数値の詳しい読み方はWBGT基準値と労働安全衛生法もご参照ください。

身体作業強度
作業が重いほど基準値は低く(厳しく)なります。安静・低代謝率・中程度・高代謝率・極高代謝率の区分に、作業を当てはめて評価します。
暑熱順化
暑熱に慣れているかどうかで基準値が変わります。新規入職者や連休明けは非順化者として、低い(厳しい)基準値で確認します。
着衣補正
通常の作業服以外の特殊な衣類は、測定WBGTに着衣補正値を加えて評価します。補正を忘れると、実際より安全側に誤って評価してしまいます。
評価値の計算
評価値=実測WBGT+着衣補正値です。この評価値を、作業強度・暑熱順化に応じた基準値と比較します。高代謝率・極高代謝率では、気流の有無でも基準値が変わります。
| 作業強度 | 作業例 | 暑熱順化者 | 非順化者 |
|---|---|---|---|
| 0 安静 | 安静・楽な座位 | 33 | 32 |
| 1 低代謝率 | 軽い手作業・ゆっくりした歩行 | 30 | 29 |
| 2 中程度代謝率 | 継続的な手・腕作業・通常の歩行・運搬 | 28 | 26 |
| 3 高代謝率 | 重量物運搬・ショベル・ハンマー作業 | 気流なし25/気流あり26 | 気流なし22/気流あり23 |
| 4 極高代謝率 | 非常に激しい活動・激しい掘削・走行 | 気流なし23/気流あり25 | 気流なし18/気流あり20 |
高代謝率・極高代謝率は「感じられる気流」の有無で基準値が変わります。判断に迷う場合は、より厳しい側(低い値)で確認するのが安全側の運用です。
WBGT28未満・基準値内であっても安全が保証されるわけではありません。症状があれば測定値や時間条件を問わず対応してください。
基準値は健康な作業者を前提とした評価の目安です。睡眠不足・持病・服薬などの個人要因、暑熱非順化、通気の悪い衣服、高強度作業などがあると、基準値内でもリスクが高まります。測定して基準内だったことを、対応を遅らせる理由にしないでください。ふらつき・頭痛・大量発汗やその後の発汗の減少などの異変があれば、作業離脱・身体冷却・状態確認・必要に応じた救急要請につなげます。実際の対応は産業医・医療機関の指示に従ってください。
防護服・重ね着の着衣補正
一般作業服
織物製の通常の作業服は補正値0で、基準となる組み合わせです。単層のSMS不織布製のつなぎ服も0とされ、補正なしでそのまま比較します。
二重着衣
織物の衣服を二重に着用する場合は+3度を加えます。測定WBGTが26度でも、補正後は29度として基準値と比較します。
不透湿性衣服
通気の悪い衣服は熱がこもり、大きな補正が必要です。単層のポリオレフィン不織布製つなぎ服は+2度、フードなしの単層の不透湿つなぎ服は+10度などとされます。ただし完全な不浸透性防護服(レベルA)には、この補正値を適用できず、別の方法で評価します。
フード
フードを被る場合は、フードなしの値にさらに+1度を加えます。ただし重ね着の補正値を単純に足し合わせることはできず、組み合わせによっては別に定められた値を用います。
計算例
中程度代謝率(非順化者の基準値26度)で織物の衣服を二重着用(+3度)する場合、測定WBGTが26度なら評価値は29度となり、基準値26度を3度上回ります。測定値だけでは基準内に見えても、補正後は超過している典型例です。
| 衣服 | 補正値 | 使用現場 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 作業服(織物製・基準) | 0 | 一般作業 | 補正なしで比較 |
| 単層SMS不織布つなぎ服 | 0 | 製造・整備 | 素材の種類を確認 |
| 単層ポリオレフィン不織布つなぎ服 | +2 | 塗装・清掃 | 透湿性の有無 |
| 織物の衣服を二重に着用 | +3 | 重ね着作業 | 単純合算は不可 |
| フードなしの単層の不透湿つなぎ服 | +10 | 防護作業 | 相対湿度に依存 |
| フードつきの単層の不透湿つなぎ服 | +11 | 防護作業 | フードは+1加算 |
| 完全な不浸透性防護服(レベルA) | 補正値を適用しない | 高濃度有害環境 | 別途リスク評価 |
作業環境測定士へ依頼する必要はある?
指定作業場との違い
作業環境測定法で作業環境測定士による測定が求められるのは、粉じんや特定化学物質などの指定作業場です。第587条の暑熱屋内作業場はこれに当たらず、測定士による測定が法的に必須とされているわけではありません。
社内測定
暑熱屋内作業場の測定は、事業場の衛生管理を担当する者などが実施できます。測定方法を統一し、機器の扱いを標準化しておくことが前提です。
専門家が望ましいケース
測定点の設計が難しい、熱源が多い、社内に測定できる人がいない、監査や第三者説明のために客観性を高めたい、といった場合は、専門家へ依頼した方がよいことがあります。「一律に不要」とも「一律に必須」とも断定せず、自社の体制に応じて判断します。
精度管理
誰が測る場合でも、機器の点検・校正、測定手順の統一、記録の様式化といった精度管理が重要です。測る人によって結果がばらつくと、評価も改善もぶれます。
労働現場用WBGT計の選び方

黒球
作業環境の評価では、日射・ふく射熱を反映する黒球付きが基本です。黒球のない簡易な機器は、屋外や熱源のある現場で暑さを過小評価するおそれがあります。
JIS
作業環境管理に用いるWBGT指数計は、JIS Z 8504またはJIS B 7922に適合したものを用いることが求められます。適合の有無は商品ページやメーカー仕様で確認します。本記事の商品情報は暫定で、JIS適合を断定していません。
携帯・据置・モニター
複数点を巡回するなら携帯型、決まった場所を常時監視するなら据置型、多人数へ常時表示するならモニター型やサイネージが向きます。用途に応じて併用します。
アラーム
しきい値を超えたときに知らせるアラームがあると、対応の遅れを防げます。
記録
測定値を記録・出力できる機能があると、記録保存や改善前後の比較が容易になります。
防水防塵
屋外や粉じんの多い現場では、防水防塵性能が実用性を左右します。仕様をリンク先で確認します。
点検・校正
正しく測れなければ評価が崩れます。点検・校正・電池交換の運用と担当を決めておきます。簡易推定値の機器は、正式なWBGT実測器と同列には扱いません。
| 商品 | 携帯・据置 | 黒球 | JIS | アラーム | 記録 | 防水防塵 | 電源 | 向く現場 | 確認事項 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| みはりん坊プロ AD-5698B | 携帯 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 電池 | 屋内外 | 黒球の有無 |
| KO392 | 要確認 | 黒球式 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 工場・建設 | 据置/携帯 |
| 黒球型熱中症指数モニター | 据置 | 黒球 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 常時表示 | 電源・設置 |
| SK-181GT | 携帯 | 黒球 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 電池 | 巡回 | 電池・記録 |
| 携帯型黒球付熱中症計 6913 | 携帯 | 黒球 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 電池 | 複数点 | 記録機能 |
| HI-302BB | 要確認 | 黒球式 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 作業環境管理 | JIS適合 |
| MT-877 | 要確認 | 黒球付 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 屋内外 | 仕様全般 |
測る:WBGT計(据置・携帯・モニター)

黒球型熱中症指数モニター
据置・表示モニター型(仕様は要確認)
対応する測定上の課題:作業場の常時監視
向く現場:常時表示
購入前の確認:電源・設置場所
価格・在庫は商品ページでご確認ください。

黒球型携帯熱中症計 SK-181GT
携帯型・黒球付(仕様は要確認)
対応する測定上の課題:測定点マップの巡回
向く現場:巡回
購入前の確認:電池・記録
価格・在庫は商品ページでご確認ください。

CUSTOM 黒球式暑さ指数計 HI-302BB
黒球式(JIS適合・記録機能は要確認)
対応する測定上の課題:据置での定期測定
向く現場:作業環境管理
購入前の確認:JIS適合・記録
価格・在庫は商品ページでご確認ください。

測定結果を看板・サイネージで共有する

数値と行動
測定した値は、行動ルール(休憩の取り方・報告の仕方)とセットで示します。看板を設置すれば周知義務が完了する、というものではなく、値と行動が結びついて初めて実効性が生まれます。朝礼での伝え方は夏のKYT・危険予知や夏のヒヤリハット事例も参考になります。
測定時刻
掲示には測定時刻を添えます。いつ測った値かが分かると、時間帯による変化を意識できます。
次回測定
次回の測定予定もあわせて示すと、測定が継続的な運用として定着します。
協力会社
元請・協力会社が混在する現場では、報告先と測定値の共有方法をそろえ、全員が同じ情報で動けるようにします。
商品タイプ
現場の規模と掲示場所に応じて、標識・ポスター・ボード・マグネット・屋外用サイネージを使い分けます。簡易推定値の気象計は、正式なWBGT実測器の代わりにはしません。
伝える:標識・看板・サイネージ

KYサークルサインWBGT 屋外用デジタルサイネージ
屋外用デジタル表示(電源・設置は要確認)
対応する測定上の課題:測定値の全員周知
向く現場:屋外・大規模
購入前の確認:電源・設置
価格・在庫は商品ページでご確認ください。

マンガ標識 GEB-49 WBGT値チェック表
標識(サイズ・素材は要確認)
対応する測定上の課題:値と対応の周知
向く現場:現場掲示
購入前の確認:サイズ・素材
価格・在庫は商品ページでご確認ください。

マンガ標識 GMW-26 WBGT値チェック表
標識(サイズ・素材は要確認)
対応する測定上の課題:値チェックの周知
向く現場:現場掲示
購入前の確認:サイズ・素材
価格・在庫は商品ページでご確認ください。

マンガ標識 マグネット GMW-M26 WBGT値チェック表
マグネット式(貼付面は要確認)
対応する測定上の課題:貼り替え可能な周知
向く現場:鉄板・車両
購入前の確認:貼付面
価格・在庫は商品ページでご確認ください。

熱中症注意ポスター 防ごう熱中症WBGT値
ポスター(サイズは要確認)
対応する測定上の課題:予防意識の周知
向く現場:休憩所・詰所
購入前の確認:サイズ
価格・在庫は商品ページでご確認ください。

熱中症注意ボード 防ごう熱中症WBGT値 NB-2
注意ボード(設置方法は要確認)
対応する測定上の課題:注意喚起
向く現場:現場入口
購入前の確認:設置方法
価格・在庫は商品ページでご確認ください。

WBGT簡易推定値気象計 GC型
簡易推定値の気象計(正式なWBGT実測器とは同列にしない/実測計との違いは要確認)
対応する測定上の課題:簡易推定値の把握
向く現場:簡易把握
購入前の確認:実測器と同列にしない
価格・在庫は商品ページでご確認ください。
測定結果が高かったときの改善順序
評価値が基準を超える、または超えるおそれがある場合は、次の順序で改善します。商品を追加するだけで基準超過のまま作業を続ける判断は避けます。
作業時間・場所
暑い時間帯を避け、涼しい時間や場所へ作業を移す、超過が大きければ中止するなど、作業そのものの調整をまず検討します。
熱源遮へい
炉などの発熱体と作業者の間に遮へい物を設け、ふく射熱を減らします。
遮光
屋外や採光部からの日射・照り返しは、遮光ネットで抑えます。
冷房・冷風
冷房・気化式冷風機・スポットクーラー・通風でWBGTの低減を図ります。気化式は湿度が上がる場合があるため換気とセットにします。
作業強度
運搬の機械化や人員配置の見直しで作業強度を下げると、同じWBGTでも基準値に余裕が生まれます。
休憩
連続作業時間を短くし、涼しい休憩場所で休憩を確保します。
再測定
対策後は作業位置で再測定し、効果を数値で確認します。効果が足りなければ次の対策を重ねます。
| 測定場所 | 対策前 | 実施対策 | 対策後 | 差 | 次の対応 |
|---|---|---|---|---|---|
| 炉前 | 29.0 | 遮へい+スポット送風 | 27.5 | -1.5 | 連続作業時間を短縮 |
| 荷捌き場 | 28.5 | 遮光ネット+送風 | 27.0 | -1.5 | 休憩を15分/時に |
| 2階作業床 | 28.0 | 換気強化 | 27.2 | -0.8 | 時間帯を前倒し |
遮光ネットで日射・ふく射熱を抑える

遮光率
遮光率は日射をどれだけ遮るかの目安ですが、遮光率とWBGTの低減率は別物です。遮光率が高いほど必ず何度下がる、とは言えません。
寸法
作業範囲や設置箇所に合う寸法を選びます。足りないと日陰が作れず、大きすぎると固定や風対策が難しくなります。
通風
日射を遮っても風がこもると熱が抜けません。通風を確保できる張り方にします。
固定
強風で飛ばないよう、確実に固定します。重機や通路、作業動線と干渉しない位置に設置します。
前後測定
設置前後で作業位置のWBGTを測り、効果を確認します。遮光ネットで必ず○℃下がると断定はできないため、実測が前提です。
遮る:遮光ネット


遮光ネットシルバー H112S/H212S
銀色の遮光ネット(寸法で分岐・遮光率とWBGT低減は別物/固定を確認)
対応する測定上の課題:日射の反射・抑制
向く現場:屋外・資材置場
購入前の確認:寸法・固定・通風
価格・在庫は各リンク先でご確認ください。
工場扇・冷風機の導入効果を測定する

工場扇
工場扇は気流で体感温度を下げ、発汗の蒸発を助けます。ただし気温そのものは下がらないため、工場扇で必ずWBGTが下がるわけではありません。
気化式冷風機
気化式冷風機は水の気化で温度を下げますが、湿度が上がるとWBGTがかえって下がりにくいことがあります。
湿度・換気
気化式は換気とセットで使い、閉め切った空間での使用は避けます。湿度の上がり方も測定で確認します。
設置位置
熱風を送らない向きにし、走行経路や通路をふさがない位置に固定します。作業者に気流が届く配置にします。
再測定
導入後は作業位置でWBGTを再測定し、効果を数値で確認します。体感の改善とWBGTの変化は一致しないことがあります。
冷やす:工場扇・冷風機(正式名称・在庫はリンク先で確認)

工場扇・送風機
送風(正式名称・能力・電源は要確認)
対応する測定上の課題:送風・冷風で環境改善
向く現場:工場・倉庫
購入前の確認:正式名称・能力・電源・在庫
価格・在庫は商品ページでご確認ください。

工場扇・送風機
送風(正式名称・能力・電源は要確認)
対応する測定上の課題:送風・冷風で環境改善
向く現場:工場・倉庫
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冷風機・冷風扇
冷風(正式名称・能力・電源は要確認)
対応する測定上の課題:送風・冷風で環境改善
向く現場:大空間
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冷風機・冷風扇
冷風(正式名称・能力・電源は要確認)
対応する測定上の課題:送風・冷風で環境改善
向く現場:中規模空間
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環境をすぐ改善できない場合の補助対策

環境改善に時間がかかる場合の補助として、身体を冷やす対策を併用します。ただしこれらは環境対策の代替ではありません。休憩時の冷却飲料はアイススラリーも参考になります。
インナー
吸汗速乾のインナーは、汗による不快感を軽減します。着用者の快適性を高める補助です。
冷却ベスト
冷却ベストは着用者の身体を冷やしますが、作業環境そのもののWBGTを下げるものではありません。安全帯・保護具との干渉に注意します。
作業時間短縮
連続作業時間を短くし、交代を増やすことは、設備がなくてもすぐ実行できる有効な対策です。
身体冷却
休憩時に首・脇などを冷やすと、深部体温の上昇を抑える助けになります。過冷却の設備や冷却ボックスが運用を支えます。

冷たい飲料
冷たい飲料を人数分そろえ、こまめな補給を促します。冷たさを保つ設備を活用します。
環境対策の代替ではない
これらの補助対策は、遮へい・冷房・送風などの環境改善の代わりにはなりません。冷却ベストで作業環境のWBGTが下がるわけではない点に注意し、環境改善とあわせて使います。
冷却衣服や飲料は身体を冷やす補助であり、作業環境そのものの改善や、WBGTが低いことによる安全の保証にはなりません。
冷却ベストで作業環境のWBGTが下がるわけではなく、WBGTが低くても作業強度・着衣・順化・体調によりリスクは残ります。これらは環境改善(遮へい・冷房・送風)や休憩・作業時間管理と組み合わせて使ってください。異変があれば測定値に関係なく、作業離脱・身体冷却・状態確認・必要に応じた救急要請につなげます。
身体を冷やす・休む:冷却衣服・冷却飲料設備

冷感インナー・ウェア
身体冷却の補助(正式名称・仕様は要確認)
対応する測定上の課題:身体冷却の補助
向く現場:各作業
購入前の確認:正式名称・仕様・在庫
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冷感インナー・ウェア
身体冷却の補助(正式名称・仕様は要確認)
対応する測定上の課題:身体冷却の補助
向く現場:各作業
購入前の確認:正式名称・仕様・在庫
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冷却ベスト
身体冷却の補助(正式名称・仕様は要確認)
対応する測定上の課題:身体冷却の補助
向く現場:各作業
購入前の確認:正式名称・仕様・在庫
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冷却ベスト
身体冷却の補助(正式名称・仕様は要確認)
対応する測定上の課題:身体冷却の補助
向く現場:各作業
購入前の確認:正式名称・仕様・在庫
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TOKYO SNOWMAN 過冷却冷蔵庫 MD-TSM-040
冷たい飲料の提供・プレクーリング補助(仕様は要確認)
対応する測定上の課題:冷たい飲料・プレクーリング補助
向く現場:拠点・休憩所
購入前の確認:仕様全般
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ど冷えもんBOX パーソナルクーリングボックス
飲料・冷却の補助設備(仕様は要確認)
対応する測定上の課題:飲料・冷却の補助
向く現場:休憩所
購入前の確認:仕様全般
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異常時対応も測定計画へ入れる

測定・改善だけでなく、異常時の対応もあらかじめ計画へ入れておきます。測定で高リスクと分かった場所ほど、対応手順を具体化します。備えの内容は熱中症応急セットもご参照ください。
報告先
症状がある人や異変に気づいた人が、誰にどう報告するかを定め、周知します。連絡先と担当者を明確にします。
作業離脱
異変があれば安全に作業から離脱させ、涼しい場所へ移します。離脱先をあらかじめ決めておきます。
身体冷却
首・脇・脚の付け根などを冷やし、衣服をゆるめます。応急用品の保管場所と使い方を共有します。
見守り
体調不良者には必ず誰かが付き添い、一人にしません。状態の変化を観察します。
搬送
緊急連絡網・搬送先・現場住所をあらかじめ把握し、必要に応じて救急要請・医療機関につなげます。
体調不良者を一人にせず、本人の「大丈夫」だけで復帰・帰宅・運転をさせないでください。応急用品は救急要請の代わりにはなりません。
熱中症では判断力が低下し、いったん軽快したように見えても再び悪化することがあります。復帰・帰宅の可否は本人の申告だけで決めず、状態を確認し、必要に応じて医療機関につなげます。特に本人に車を運転させて帰宅させることは避けます。応急セットや緊急用身体冷却用品は身体冷却を補助する備品で、あれば救急要請が不要になるわけではありません。使用と並行して、必要に応じ救急要請・搬送を行います。実際の対応は産業医・医療機関の指示に従ってください。
備える:応急・緊急冷却用品

緊急用身体冷却関連商品
緊急時の身体冷却の補助(救急の代替ではない/正式名称・内容は要確認)
対応する測定上の課題:緊急時の身体冷却の補助
向く現場:複数人・工場
購入前の確認:正式名称・内容(救急の代替でない)
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暑熱作業環境測定でよくある失敗
- 室温だけで判断する/法定の作業環境測定とWBGTを混同する
- WBGT28を作業環境の合否基準にする/屋内と屋外を混同する
- 温湿度計だけで測る/黒球なしの機器で炉前を評価する/JIS適合を確認しない
- 朝一度だけ・涼しい場所だけ・日陰で測る/熱源付近や休憩所を測らない
- 作業強度・暑熱順化・着衣補正を考慮しない
- 機器の点検・校正をしない/測定方法が統一されていない
- 記録するだけで対策しない/対策後の再測定をしない
- 工場扇で必ず改善すると考える/冷却衣服と環境改善を混同する
- WBGT計の購入だけで法令対応と考える/異常時手順がない
法人向け暑熱測定チェックリスト
法令対象・測定計画
- □ 587条の屋内作業場に該当するか確認した
- □ 607条の定期測定(半月以内ごと)を計画した
- □ 612条の2の対象作業を確認した
- □ 作業工程と熱源から測定点マップを作った
測定器・測定場所・時刻
- □ 黒球付き・JIS適合を確認した
- □ 作業者位置・熱源付近・休憩所を測る
- □ 最も暑い時間帯を含め時間帯別に測る
評価(強度・順化・着衣)
- □ 作業強度の区分を当てはめた
- □ 暑熱順化の有無を確認した
- □ 着衣補正後の評価値で比較した
記録・周知
- □ 定期測定を3年間保存する
- □ 値と行動ルールをセットで周知した
- □ 協力会社と共有方法をそろえた
環境改善・再測定・設備点検
- □ 改善順序に沿って対策した
- □ 対策前後で再測定した
- □ 測定器・設備の点検・校正をした
異常時対応・翌年度改善
- □ 報告先・搬送先・応急用品の場所を共有した
- □ 一人にしない・本人申告のみで帰宅させない
- □ 記録を振り返り翌年度計画に反映した
作業環境測定と暑熱基準に関するFAQ
Q. 暑熱の作業環境測定は義務ですか?
A. 溶鉱炉・加熱炉・鋳込み・熱源乾燥室・冷蔵庫内など、労働安全衛生規則第587条に列挙された暑熱・寒冷・多湿の屋内作業場については、第607条により半月以内ごとに1回、定期に気温・湿度・ふく射熱を測定する義務があります。これに当たらない一般の作業場に、この定期測定が一律に課されるわけではありませんが、2026年のガイドラインでは、熱中症リスクのある作業でWBGTを現場で随時把握することが求められます。
Q. 暑熱作業場に温度の上限は決まっていますか?
A. 暑熱作業すべてに共通する単一の室温上限は定められていません。「何℃以下なら必ず適法」という基準はなく、対象の屋内作業場では気温・湿度・ふく射熱を定期測定し、熱中症リスクはWBGTを作業強度・着衣・暑熱順化とあわせて評価します。参考として、空調のある事務室には別途、気温17〜28度・湿度40〜70%という努力義務(事務所衛生基準規則)があります。
Q. 暑熱作業場では何を測定しますか?
A. 対象の屋内作業場では、気温・湿度・ふく射熱の3項目を測定します。作業環境測定基準により、気温・湿度は0.5度目盛りのアスマン通風乾湿計(またはこれと同等以上の機器)、ふく射熱は黒球温度計を用います。ふく射熱の測定は、第587条第1号から第8号までの熱源のある屋内作業場が対象です。熱中症リスク評価では、これらを総合したWBGTを別途把握します。
Q. 測定頻度はどのくらいですか?
A. 第587条の屋内作業場の定期測定は、半月以内ごとに1回とされています。一方、熱中症リスク評価のためのWBGTは、最も暑くなる時間帯や作業条件・設備の稼働状態が変わるたびに随時把握することが望まれます。事前にWBGTが基準値を超えることが予想される場合は、作業中に実測するよう努めます。定期測定と随時把握は目的が異なるため、分けて計画します。
Q. 作業環境測定士は必要ですか?
A. 第587条の暑熱屋内作業場の測定は、作業環境測定法上の指定作業場ではなく、作業環境測定士による測定が法的に必須とされているわけではありません。事業場の衛生管理を担当する者などが実施できます。ただし、測定方法の統一や機器の点検・校正など精度管理の面で、専門家へ依頼した方がよいケースもあります。一律に不要と断定せず、自社の体制に応じて判断します。
Q. 屋外作業も測定義務がありますか?
A. 第587条・第607条の定期測定は屋内作業場が対象で、屋外作業そのものにこの定期測定義務が課されるわけではありません。ただし「屋外は測定不要」という意味ではなく、屋外でも熱中症リスク評価のためにWBGTを作業位置で随時把握することが求められます。第612条の2の対象となる作業では、屋内外を問わず報告体制・手順・周知が必要です。
Q. 環境省の予測値だけで判断してよいですか?
A. 予測値だけで全現場を判断することはできません。環境省の値はその地域を代表する参考値で、日射の強い屋外、炉の近く、風の通らない屋内などでは実際のWBGTが大きく異なります。事前にWBGTが基準値を超えることが予想される場合は作業位置で実測するよう努める、というのが基本です。
Q. 温湿度計だけで評価できますか?
A. 温湿度計だけでは、屋外や炉前などのふく射熱を評価できません。WBGTは気温・湿度に加え日射・ふく射熱・気流を反映するため、作業環境の評価では黒球付きのWBGT計での実測が基本です。屋内定期測定でも、ふく射熱は黒球温度計で測ります。
Q. WBGT計に黒球は必要ですか?
A. 作業環境の評価では黒球付きが重視されます。黒球温度は日射やふく射熱の影響を反映するため、黒球のない簡易な機器では、屋外や熱源のある現場で暑さを過小評価するおそれがあります。用途に応じて黒球付きの機器を選ぶことが基本です。簡易推定値の機器は、正式なWBGT実測器と同列には扱いません。
Q. どこで測ればよいですか?
A. 作業者が実際に作業する位置で測ります。屋内定期測定では、単位作業場所の中央部・床上50〜150cmに測定点を1つ以上設け、ふく射熱は熱源ごとに作業場所で熱源に最も近い位置で測ります。熱中症リスク評価では、熱源付近・荷捌き場・コンテナ内・休憩場所など、暑くなりやすい場所を測定点マップにして押さえます。
Q. 何時に測ればよいですか?
A. 最も暑くなる時間帯を含めて測ります。朝一度だけの測定では、日中のピークや午後の設備稼働時の上昇を見落とします。時間帯別に測り、設備の稼働前後や条件が変わったときにも測定します。
Q. WBGT28になったら作業中止ですか?
A. WBGT28は一律の作業中止基準でも、作業環境の合否基準でもありません。28という数値は、気温31度・時間条件とあわせて第612条の2の対象作業を判定するものです。熱中症リスクは、着衣補正後のWBGTを作業強度・暑熱順化別の基準値と比較して評価します。中程度以上の作業では28未満でも基準を超えることがあります。
Q. 着衣補正とは何ですか?
A. 通常の作業服以外の特殊な衣類を着る場合、測定したWBGTに衣類ごとの補正値を加えて評価することです。たとえば織物の衣服を二重に着る場合は+3度、単層の不透湿つなぎ服は+10度などです。補正後のWBGTを、作業強度・暑熱順化別の基準値と比較します。完全な不浸透性防護服には適用できません。
Q. 工場扇を置けばWBGTは下がりますか?
A. 工場扇は気流で体感温度を下げ発汗の蒸発を助けますが、気温そのものは下がらず、工場扇で必ずWBGTが下がるわけではありません。導入後は作業位置でWBGTを再測定し、効果を確認します。冷房・熱源遮へい・休憩と組み合わせて使います。
Q. 遮光ネットで何度下がりますか?
A. 遮光ネットで必ず何度下がると断定はできません。遮光率とWBGTの低減率は別物で、効果は日射・風・設置条件で変わります。直射日光やふく射熱を抑える補助として有効ですが、設置前後で実際にWBGTを測定し、効果を確認することが重要です。
Q. 冷却ベストで作業環境は改善しますか?
A. 冷却ベストは着用者の身体を冷やす補助対策で、作業環境そのもののWBGTを下げるものではありません。環境改善(遮へい・冷房・送風)とは役割が異なります。環境をすぐ改善できない場合の補助として検討し、環境対策の代替にはしません。
Q. 測定記録はどれくらい保存しますか?
A. 第587条の屋内作業場の定期測定では、測定日時・測定条件・測定結果・改善措置を講じたときはその概要等を記録し、3年間保存することとされています。熱中症リスク評価のためのWBGT記録に法定様式はありませんが、作業強度・着衣・順化・対策・再測定値とあわせて残すと、改善や監査、翌年度の計画に役立ちます。
Q. 休憩所も測定した方がよいですか?
A. 測定した方がよいです。休憩所が暑いままでは身体が回復しません。作業場所だけでなく休憩場所のWBGTも把握し、冷房・送風・日陰で涼しく保てているかを確認します。休憩所が作業場所から遠すぎないかも点検します。
Q. WBGT計を買えば法令対応は完了しますか?
A. 完了しません。測定器の購入は手段であり、それだけで法令対応にはなりません。対象屋内作業場では定期測定と記録、熱中症リスクのある作業では第612条の2の報告体制・対応手順・周知が求められます。測定した値を評価・改善・再測定・記録につなげ、体制と組み合わせて初めて意味を持ちます。
Q. 作業者に症状が出たらどうしますか?
A. 測定値や作業時間の条件にかかわらず、あらかじめ定めた手順で対応します。作業から離脱させ、涼しい場所で身体を冷やし、必ず誰かが付き添います。意識がはっきりしない、自力で水分が取れない、症状が改善しない場合は、ためらわず救急要請・医療機関につなげます。本人の「大丈夫」だけで復帰・帰宅を判断せず、回復後も悪化することがあるため慎重に対応します。
Q. 測定と法令対応で最初に何をすべきですか?
A. まず作業工程と熱源を確認し、測定点マップを作ることです。対象の屋内作業場かを確認し、気温・湿度・ふく射熱の定期測定とWBGTの随時把握を計画します。作業強度・着衣・暑熱順化を踏まえて基準値と比較し、環境改善・作業変更・再測定・記録・周知までを一つの運用としてつなげ、第612条の2の報告体制・手順とあわせて整えます。
まとめ|測定・評価・改善・再測定を一つの運用にする
暑熱作業に共通する一律の室温上限はなく、暑熱の測定は目的の異なる制度に分かれています。
第587条の暑熱屋内作業場では、第607条により半月以内ごとに気温・湿度・ふく射熱を定期測定し、記録を3年間保存します(第588条は騒音の規定で暑熱とは別)。熱中症リスク評価では、WBGTを作業位置で随時把握し、着衣補正を加えて作業強度・暑熱順化別の基準値と比較します。WBGT28・気温31と時間条件は第612条の2の対象判定であり、一律の作業中止・環境合否基準ではありません。測った値は、遮へい・遮光・冷房・送風・作業変更へつなげ、対策前後で再測定して効果を確認します。工場扇や遮光ネットで必ずWBGTが下がるわけではなく、冷却衣服は環境改善の代替ではありません。測定器の購入だけでは法令対応は完了せず、測る・評価する・改善する・再測定する・記録するを一つの運用にし、報告体制・異常時手順とあわせて整えることが重要です。具体的な条文の適用は所轄の労働基準監督署等へご確認ください(本記事は法的・医学的助言ではありません)。

測る・伝える・遮る・冷やす・休む・備えるを、2026年の特集ページからカテゴリごとにまとめて確認できます。
参考:e-Gov 労働安全衛生規則/厚労省 職場における熱中症予防情報/2026年ガイドライン/環境省 熱中症予防情報サイト
