運送会社の熱中症対策完全ガイドドライバー・荷下ろし・点呼で行うべき安全管理

運送会社の熱中症対策は、ドライバー任せにせず「会社の仕組み」として運用することが大切です。
運送会社の熱中症対策は、ドライバーが各地に分散して働くため、「管理者が常時そばにいない」という難しさがあります。運転中はエアコンが効いていても、荷積み・荷下ろし、荷主先での待機、倉庫内作業など、車外では高温・高負荷の環境にさらされます。実際、運送業の熱中症は増加傾向にあり、近年は発生件数が大きく伸びていると報告されています。
この記事では、運送会社の熱中症対策を、場面別(点呼・荷積み・荷下ろし・運転中・荷主先待機・帰庫後)に分けて解説します。特に、点呼を体調確認の場として活用するという運送業ならではの切り口を中心に、報告体制づくり、車両・営業所の備品、初動対応までを、運行管理者・安全衛生担当者が社内で共有しやすい形でまとめました。
運送会社の熱中症対策でまず押さえたいポイント
- ・運送業は「移動する職場」。ドライバー任せにせず会社の仕組みで対策する
- ・運転中だけでなく、荷積み・荷下ろし・倉庫内・荷主先待機・帰庫後が危険
- ・点呼を「体調確認の場」として活用する
- ・異変を感じたドライバーがすぐ連絡できる報告体制をつくる
- ・ウェアなどの個人装備と、車両・営業所の応急用品を分けて備える
- ・2025年6月の改正で、体制整備・手順作成・周知が事業者に求められている
- ・重症が疑われる場合は、ためらわず救急要請
運送会社で熱中症対策が重要な理由
運送業は、「移動する職場」で管理が難しいこと、荷役作業の負荷が高いこと、2025年6月から対策が強化されたことから、熱中症対策が特に重要です。
運送業は「移動する職場」だから管理が難しい
運送業の大きな特徴は、ドライバーが各地に分散して、管理者の目が届かない場所で働くことです。工場や倉庫のように管理者が常時そばにいないため、異変が起きても気づかれにくく、対応が遅れるリスクがあります。だからこそ、点呼や連絡の仕組みで「離れていても体調を確認できる」ことが重要になります。
荷積み・荷下ろしは短時間でも高負荷
運転自体は座り作業ですが、荷積み・荷下ろしは短時間でも身体負荷が高い作業です。特に、閉め切ったトラック荷台や空調のない倉庫内は高温になりやすく、汗を大量にかきます。涼しい運転席との温度差で、体への負担が大きくなる点にも注意が必要です。
2025年6月から事業者の熱中症対策が強化されている
2025年6月1日に施行された改正労働安全衛生規則により、職場での熱中症対策が事業者に義務付けられました。全日本トラック協会も、これを受けて運送事業者向けに対策を案内しています。事業者に求められる主な取組は、早期発見のための体制整備、重篤化を防止するための措置の手順作成、関係作業者への周知です。運送業もこの対応が求められます。
対象となる作業や具体的な対応の詳細は、別記事「熱中症対策と労働安全衛生規則改正」もあわせてご確認ください。法令の解釈・自社への適用は、厚生労働省の公式情報や専門家にご確認ください。
運送会社で熱中症が起こりやすい場面
運送業の1日には、熱中症リスクが高まる場面がいくつもあります。場面ごとに対策を考えましょう。
1. 出庫前・朝の点呼時
前日の疲労や睡眠不足、二日酔い、朝食抜きなどは、その日の熱中症リスクを高めます。出庫前点呼は、その日の体調を確認できる貴重な機会です。「よく眠れたか」「朝食・水分を取ったか」などを確認することで、リスクの高いドライバーを早めに把握できます。
2. 荷積み・荷下ろし作業中

最も注意したい場面のひとつです。高温の荷台・倉庫内での荷役は、短時間でも体に大きな負担がかかります。厚生労働省の労働災害事例にも、倉庫内の荷下ろし作業後に歩行不能となり、熱中症による多臓器不全で死亡した事例が報告されています。こまめな休憩・補給、単独作業を避ける配慮が必要です。
3. トラック車内・長時間運転中
運転中はエアコンが効いていても、渋滞や日射で効きが追いつかないことや、アイドリングストップ中・仮眠時に車内が高温になることがあります。長時間運転による疲労や、トイレを我慢して水分を控えることも、隠れたリスクです。
4. 荷主先・配送先での待機中
荷主先や配送先での待機は、自社の管理が及びにくい場所です。炎天下や空調のない場所で長時間待たされることもあり、ドライバーが暑さを我慢してしまいがちです。待機中の暑さリスクも把握しておく必要があります。
5. 帰庫後・終業点呼時
1日の疲労と暑熱の影響が蓄積した状態です。帰庫後の点呼は、その日の体調変化や、翌日へ持ち越しそうな不調を確認する場として活用できます。「今日はきつかった」という声を拾える仕組みが、翌日の事故予防につながります。
運送会社が点呼で確認したい熱中症チェック項目

運送業ならではの強みは、毎日「点呼」という体調確認の機会があることです。点呼のタイミングごとに、確認したい項目を整理しました。
| タイミング | 確認したい項目 |
|---|---|
| 出庫前点呼 | 睡眠は十分か/朝食・水分を取ったか/体調・二日酔いの有無/その日の暑さ予報と危険時間帯の共有/飲料・冷却用品の積み込み確認 |
| 中間連絡(運行中) | 体調変化の有無/水分補給ができているか/荷下ろし後の状態/無理のある運行になっていないか |
| 帰庫後点呼 | 体調変化・不調の有無/きつかった作業・場面/水分が取れていたか/翌日に持ち越しそうな疲労 |
| 翌日確認 | 前日の不調が回復したか/睡眠・食事が取れたか/連勤による疲労蓄積の有無 |
点呼簿や点呼アプリに熱中症チェックの項目を加えるだけでも、体調確認が仕組みになります。「いつもと違う」を早く見つけることが、重症化を防ぐ第一歩です。
運送会社が作るべき熱中症報告体制
ドライバーは離れた場所で働くため、「異変を感じたら、すぐ・誰に・どう連絡するか」を明確にしておくことが、特に重要です。
ドライバーが異変を感じた時の連絡ルール
「少しでも体調がおかしいと感じたら、無理せず安全な場所に停車し、すぐ運行管理者へ連絡する」というルールを明確にします。「連絡したら怒られる」「迷惑をかける」と思わせない雰囲気づくりも大切です。連絡が遅れる最大の要因は、ドライバーの遠慮だからです。
同僚・荷主先が異変に気づいた場合のルール
本人が気づけないこともあるため、周囲が気づいたときの連絡ルートも決めておきます。荷主先や配送先で異変を見かけた場合に、誰へ連絡すればよいかを、関係先とも共有しておくと安心です。
車内掲示・スマホ共有が有効
緊急連絡先や、熱中症が疑われるときの対応手順を、運転席に掲示するステッカーや、スマホで見られる形で共有しておくと、いざというとき迷いません。全日本トラック協会も、車内貼付用ステッカーなどの活用を案内しています。報告体制づくりの詳しい方法は、別記事「熱中症の報告体制・連絡体制の作り方(ひな形付き)」も参考にしてください。
ドライバー個人が身につけたい熱中症対策用品

熱中症対策に大活躍の衣服
荷積み・荷下ろし、屋外待機、倉庫内作業が多いドライバーには、身につける熱中症対策が役立ちます。作業時の体感温度を下げ、暑い時期の負担を軽くするアイテムです。

熱中症対策ウェア①
荷積み・荷下ろしや屋外待機が多いドライバー向けの、身につける熱中症対策ウェア。作業時の体感温度を下げる助けになります。

熱中症対策ウェア②
暑い時期の作業をサポートするウェア。倉庫内作業や屋外での荷役にも取り入れやすいアイテムです。

熱中症対策ウェア③
身につけて使う熱中症対策アイテム。ドライバーの日々の作業に取り入れやすい仕様です。

熱中症対策ウェア④
荷役作業や屋外待機時の暑さ対策に。動きやすさと涼しさをサポートします。

熱中症対策ウェア⑤
暑い現場で活躍する熱中症対策ウェア。ドライバー・構内作業者の身につける対策として使えます。
車両・営業所・倉庫に備えておきたい熱中症対策アイテム

備えておくと安心な熱中症対策アイテム
車両・営業所・倉庫・トラックバースに備えておきたい応急用品です。外出先で異変が起きたときに対応しやすくなります。特にエマージェンシープールは、重症化に備えた応急冷却用品として、営業所・倉庫・大型物流拠点・イベント配送拠点など、人が集まる拠点での備えに向いています。

熱中症応急セット(基本タイプ)
冷却剤・経口補水パウダーなどがまとまった応急セット。車両・営業所・倉庫・トラックバースに備えておくと、初動対応に役立ちます。

熱中症応急セット(充実タイプ)
より充実した内容の応急セット。営業所や倉庫など、人が多く集まる拠点への常備に向いています。

休憩時の冷却・リフレッシュ用品
休憩時に体を冷やすクールダウン用品。トラック車内や休憩スペースに常備しておきたい一品です。

エマージェンシープール(応急冷却用品)
重症化に備えた応急冷却用品。営業所・倉庫・大型物流拠点・イベント配送拠点など、人が集まる拠点での備えとして検討しやすいアイテムです。
用品は「備えるだけ」でなく、置き場所を全員に周知し、使い方を共有しておくことで、いざというときに機能します。応急冷却用品だけで完結させず、停車・作業中止・身体冷却・水分補給・必要に応じた救急要請とセットで運用してください。
運送会社でよくある熱中症対策の失敗
ドライバー任せにしている
「水分を取るように」と言うだけで、あとは個人任せにしているケースです。点呼・連絡・備品など、会社の仕組みとして運用しないと、対策は徹底されません。
運転中だけを見て、荷下ろしを見落とす
「エアコンがあるから大丈夫」と運転中だけを見て、最も危険な荷積み・荷下ろし・倉庫内作業のリスクを見落とすケースです。車外作業こそ要注意です。
荷主先での暑さリスクを把握していない
荷主先・配送先での待機環境を把握しておらず、炎天下や空調のない場所での長時間待機を見逃すケースです。待機環境の確認・改善依頼も対策のひとつです。
帰庫後の体調確認をしていない
帰庫後は「お疲れさま」で終わり、体調確認をしていないケースです。暑熱の影響は蓄積します。帰庫後・翌日の確認が、連勤時の事故予防につながります。
熱中症が疑われるドライバーがいた時の初動対応

意識がない・受け答えがおかしい・自力で水分が取れない場合は、ためらわず救急要請(119番)。運転中の異変は重大事故にもつながるため、早めの判断が大切です。
まず安全な場所に停車・作業中止
運転中であれば、無理をせず安全な場所に停車します。作業中であれば、すぐに作業を中止します。「もう少しで着くから」「あと少しで終わるから」と続けさせないことが大切です。運行管理者は、本人からの連絡を受けたら、まず停車・中止を指示します。
身体を冷やす
涼しい場所(エアコンの効いた車内・店舗・日陰)へ移動し、衣服をゆるめ、首・脇の下・足の付け根を冷やします。車内の冷却用品や、コンビニ等で入手できる氷・冷たい飲み物も活用します。意識がはっきりしていれば、水分・塩分を少量ずつ補給します。
救急要請を迷わないケース
- 意識がない、もうろうとしている
- 呼びかけへの受け答えがおかしい
- 自力で水分が取れない
- けいれんがある、まっすぐ歩けない
- 冷やしても症状が改善しない
これらに当てはまる場合は、迷わず救急要請してください。外出先で本人が住所を説明できない場合は、目印や付近の建物を伝えるよう促します。
配送・荷主対応は会社側が行う
ドライバーが治療・休養に専念できるよう、配送先への連絡・遅延の謝罪・代替手配などの業務対応は、会社側が引き受けます。「荷物を届けなければ」という責任感が、ドライバーの無理につながらないようにすることが、会社の役割です。発生状況の記録と再発防止も忘れずに行います。
運送会社の熱中症対策チェックリスト

- 出庫前・帰庫後の点呼に熱中症チェック項目を加えている
- 睡眠・朝食・水分摂取・体調を点呼で確認している
- その日の暑さ予報・危険時間帯をドライバーに共有している
- 荷積み・荷下ろし時の休憩・補給ルールがある
- ドライバーが異変を感じた時の連絡ルールを明確にしている
- 周囲・荷主先が異変に気づいた時の連絡ルートがある
- 緊急連絡先・対応手順を車内掲示やスマホで共有している
- ドライバーに冷感・空調ウェアなどの個人装備を支給・推奨している
- 車両に飲料・冷却用品・応急セットを積んでいる
- 営業所・倉庫に応急セット・応急冷却用品を備えている
- 荷主先・配送先の待機環境(暑さ)を把握している
- 熱中症発生時の記録・再発防止の仕組みがある
よくある質問
Q. 運送会社の熱中症対策は何から始めればいいですか?
まず、点呼を体調確認の場として活用することから始めるのがおすすめです。出庫前・帰庫後の点呼で、睡眠・体調・水分摂取などを確認する項目を加えるだけでも、異変の早期発見につながります。あわせて、異変を感じたドライバーがすぐ連絡できる報告体制を整え、車両・営業所に応急用品を備えることで、無理なく対策を始められます。
Q. トラックの中はエアコンがあるので熱中症対策は不要ですか?
不要とは言えません。運転中はエアコンが効いていても、荷積み・荷下ろし、荷主先での待機、倉庫内作業など、車外での作業時には高温・高負荷の環境にさらされます。また、アイドリングストップ中や仮眠時に車内が高温になることもあります。運転中だけでなく、車外での作業全体を見て対策することが重要です。
Q. 荷下ろし作業では何に注意すべきですか?
荷下ろしは短時間でも身体負荷が高く、特に倉庫やトラック荷台の内部は高温になりやすい場所です。実際に、倉庫内の荷下ろし作業後に熱中症で重症化した事例も報告されています。こまめな休憩・水分塩分補給、作業前後の体調確認、単独作業を避ける、荷役後に体を冷やす時間を取るなどの配慮が必要です。
Q. 車両に積んでおくとよい熱中症対策用品はありますか?
経口補水液・塩分補給品、冷却タオルや保冷剤などの冷却用品、熱中症応急セットなどを車両に積んでおくと、外出先で異変が起きたときに対応しやすくなります。営業所・倉庫には、より充実した応急セットや、重症化に備えた応急冷却用品を備えておくと安心です。
Q. 熱中症が疑われるドライバーが出た場合、会社は何をすべきですか?
まずドライバー自身に、安全な場所への停車・作業中止と、涼しい場所での身体冷却を指示します。意識がおかしい・自力で水分が取れないなどの場合は、ためらわず救急要請(119番)を。そのうえで、配送先への連絡や代替手配といった業務対応は会社側が行い、ドライバーが治療・休養に専念できるようにすることが大切です。発生状況の記録と再発防止も会社の役割です。
まとめ
運送会社の熱中症対策は、「移動する職場」であるという特性を踏まえて設計することが大切です。運転中だけでなく、荷積み・荷下ろし・倉庫内・荷主先待機・帰庫後まで、リスクの高い場面は1日のなかにいくつもあります。そして最大の武器は、毎日行う点呼を体調確認の場として活用することです。
ドライバー任せにせず、点呼・報告体制・個人装備・車両と拠点の備品を、会社の仕組みとして整えましょう。2025年6月からは体制整備・手順作成・周知も求められています。本記事のチェックリストを使って、自社の対策を一度見直してみてください。重症が疑われる場合は、ためらわず救急要請を。
ドライバー・車両・営業所の熱中症対策用品をチェック
運送会社の熱中症対策は、ドライバー本人の注意だけでなく、点呼時の体調確認、荷下ろし時の休憩ルール、車両備品、営業所・倉庫の応急用品までセットで整えることが大切です。グリーンセレクトでは、ドライバーが身につけやすい冷感・空調系ウェアや、車両・営業所に備えておきたい熱中症対策キット、応急冷却用品を取り扱っています。運送会社の夏場対策を見直したい方は、ぜひ商品ページをご確認ください。
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